姉歯建築設計事務所が構造計算書を偽造した事件で、この設計事務所が構造設計を担当した建物が北九州市と苅田町でそれぞれ1棟確認された。北九州市の物件は今年6月に開業したアルクイン黒崎。苅田町の物件は今年12月に開業予定の苅田プレモントホテル。北九州市と福岡県は近日中に建物を再点検して結果を公表する。
アルクイン黒崎は地上11階、客室数155のビジネスホテル。施主の菅原不動産(本社、北九州市)が長崎屋黒崎店跡地に建設させた菅原第2ビルの一部を構成する。建物は醇建築まちづくり研究所が設計し、竹中・安井共同企業体が施工したが、ホテル棟に関してはノウハウに長けた木村建設(本社、熊本県八代市)が設計・施工を請け負った。耐震基準の7割程度の強度しかないそうだ。
苅田プレモントホテルは地上11階、客室数127のビジネスホテル。施主はホテルオオハシ(本社、長野県飯田市)で、苅田駅界隈で建設中。12月23日の開業を目指して内装工事の仕上げの段階だった。建物はKSM一級建築士事務所が設計し、木村建設が施工した。図面を見直したところ耐震基準の7~9割の強度しかないそうだ。ホテルオオハシは七つのホテルのうち三つで耐震偽造が確認され、同社の中島憲治社長は突如の経営危機に疲労困憊している。
黒崎と苅田の物件は、姉歯建築設計事務所が構造設計を担当し、木村建設が工期半年の独自工法「HQ工法」で施工して、日本ERI(本社、東京都)の北九州支店が建築基準法による確認済証を交付したことで共通する。
施工業者の木村建設は11月21日の手形決済が不調に終わり、11月末までに自己破産の手続きに入る。主要取引銀行の熊本ファミリー銀行などが自己保有の債権を木村建設の当座口座にあった預入金で相殺したのが不渡りの原因という。手形決済用の金を押さえられて、落ちるはずの手形が落ちなかった。
今後の手順としては、菅原不動産とホテルオオハシがそれぞれ木村建設に対して瑕疵担保責任を訴えて契約の解除を迫り、木村建設は「隠れた瑕疵」の設計図面を作成した姉歯建築設計事務所や、偽造図面に確認済証の信頼を与えた日本ERIに対して損害賠償を請求することになる。しかし、木村建設は自己破産により責任能力がなく、姉歯建築設計事務所にはもとより支払能力がない。損害が全額補償される見込みはほとんどない。
アルクイン黒崎はすでに予約受付を中止したようすだ。苅田プレモントホテルは予定通りには開業できそうにない。建物が解体撤去されるか、耐震補強になるかは再点検の結果によるが、施主の経営体力がいずれも弱いことから、建て替えが必要なのに公的な救済がない場合は、問題物件が廃墟化する恐れもある。
※ 続報は以下のページを参照のこと。