国土交通省九州運輸局(福岡市)は29日、北九州市にある海運部門を来年8月に竣工予定の福岡市の新合同庁舎へ移転することを明らかにした。行政の効率化が理由で、2006年度の国土交通省関係予算概算要求に盛り込んだ。
国土交通省はこれまで関門に2部門を配置してきた。一つは下関の九州地方整備局港湾空港部門(約150名)。運輸省第四港湾建設局の時代に新北九州空港を密かに構想して、苅田沖に浚渫土砂処分場の建設を決めたことが時事の話題として思い出される。
もう一つは門司の九州運輸局海運部門(約120名)。西日本最大の港湾・関門港の中心地に事務所を構えて九州山口の海運を統括してきた。
2部門の移転話が持ち上がったのは2002年1月のことだった。北九州・下関両市は同省へ計画の白紙撤回を求めたが、当時の扇千景大臣は基本方針を変えず、2部門を入居させるための新庁舎の建設に着手した。
しかし来年度の概算要求では九州運輸局海運部門の移転だけが盛り込まれ、九州地方整備局港湾空港部門の移転は見送られたようだ。安倍晋三幹事長代理を擁す下関と、いわゆる造反議員しかいない北九州で命運を分けた格好だ。
門司税関発表の全国港別輸出・輸入額順位表(2001年、最新)によれば、関門港の輸出入総額は1兆6246億円。苅田港の3527億円を含めれば関門地域の港勢は約2兆円に達し、9665億円しかない博多港の2倍の規模がある。
九州運輸局は行政の効率化を移転の理由として挙げるが、海運の中心地から撤退し、現場の事情に疎くなれば誤った施策につながる。事実、九州運輸局の本局は、狭い海峡をはさんで相対する北九州港と下関港の統合という長年の懸案を放り出して、北九州港と博多港の連携による「スーパー中枢港湾」指定に躍起だ。海運部門が福岡市へ移転すれば、海運行政に福岡政財界の意向が色濃く反映されることになりそうだ。
2005年5月の国土交通委員会で共産党の仁比聡平議員はスーパー中枢港の問題を取り上げ、次のように発言した。
「博多港と北九州港というのは直線距離でも約80キロですから、阪神港と姫路ぐらい離れているわけですね。玄界灘の強い潮流のことを考えれば、もっと離れている港だと思っていいと思うんですが、だからこそ、これまでそれぞれ別の港として歴史も機能も全く違う形で発展をしてきているわけです。これを一体にしてスーパー中枢港湾を目指すというのは私は荒唐無稽と言わざるを得ない」。
今後、関門が海運行政に関して独自性を保つことは難しくなる。九州運輸局は「北九州市とは今後、運輸行政に関わる課題・要望等について、トップ会談等を通して意思疎通・連携を取る」という。言い換えれば、何事を決めるにもトップ等が福岡へ出向いて陳情する必要があるということだ。