新日本製鐵(本社、東京都)が連結子会社のスペースワールド(本社、北九州市)の営業権を、観光開発で知られる加森観光(本社、札幌市)へ譲渡する方向で検討していることが明らかになった。現時点で具体的な内容は決まっていないが、関係者によれば交渉は大詰めの段階だという。
スペースワールドは1990年に東田の八幡製鐵所跡地で開業。米スペースキャンプ財団とのライセンス契約によるスペースキャンプを柱とした宇宙を主題とした学習体験施設だった。しかし初年度、翌年度ともに集客目標の200万人を達成できなかったため、3年目から絶叫マシンを中心とした「としまえん」風の遊園地に変貌した。入場者のピークは1997年度の216万人。
しかし景況の悪化から入場者数が減少に転じたこともあり、飽きられやすい絶叫マシンに定期的に巨額の設備投資をする体力がなくなった。近年は「居心地のよさの演出に力を入れ、安定して集客できる体質に変えてゆきたい」として設備更新を控え、イベント等の開催に主軸を移して守りの経営に転じた。この戦略は入場者数の低落に加えて採算性の悪化も加速させた。2004年度の入場者数は165万人。2004年3月期の累積損失は約352億円。
新日鐵はスペースワールド単体では採算が見込めないことから、これをオープンパークとして無料開放し、隣接地に建設するレジャー志向の広域型商業施設(イオン八幡東田ショッピングセンター)と組み合わせることも検討した。テーマパークを解消させ、一方で東田にこれまでにない次世代の街づくりの息吹を吹き込むという一石二鳥で、この方針に対する期待は高かった。しかし、実現にはさまざまな障害があったとみえる。
加森観光はわが国の観光開発の第一人者として手腕に定評があり、北海道で多数の観光施設を再生させたほか、別府の杉乃井ホテルの経営を立て直したことで知られる。加森観光にとっても別府と交流の深い北九州で展開すれば相乗効果が見込めるなど、経営に乗り出す利益はある。
スペースワールドの債務に関しては新日鐵が引当金を積んでおり、不良債権等が発生することはない。しかし、税制面での負担軽減を狙って民事再生法の適用を申請する可能性はある。
スペースワールドは戦略なく場当たり的で、どれを取っても中途半端なテーマパークだった。観光開発の第一人者が営業権を握ることにより、戦略に一貫性を持ったテーマパークに生まれ変わることが期待される。
スペースワールドは13日、福岡地裁小倉支部に民事再生法の適用を申請した。今後同社は資本金20億円を100%減資して、累積損失は新日鐵が引き受けて清算した後、加森観光が新たに1000万円を出資してスペースワールドを完全子会社化する。一連の手続きは経営権の移転を明確にし、税務上の特例を受けるため。 -すいか