関門通信

広告

論説

小倉伊勢丹の2年目に期待したい

小倉伊勢丹が不振のまま1年目を終えた。同社の寺垣勝仁社長は7日、初年度の売上高が182億円程度になることを明らかにした。同店は初期投資が低かったこともあり、初年度は260億円という控えめな数字を掲げたが、その目標すら約30%も下回る惨憺たる結果だった。百貨店業界は小倉伊勢丹の初年度を近年まれに見る大失敗とみている。

小倉伊勢丹は昨年2月10日に開業した。今年1月末日までの売上高は約179億円。百貨店の主力商品である女性向の衣料品がまったく売れなかった。来店客数は目標より104万人少ない896万人。客単価は530円少ない2720円。前半期より後半期のほうがよくない。状況は日を追うごとに悪くなっている。

不振の原因

伊勢丹の不振はやむをえない部分があり、地元政財界にも反省すべき点が多い。寺垣社長は地元の強力な要請により準備期間が取れなかったことを挙げるが、市場調査そのものを断念して成功例である立川店をそのまま持ち込んだのは伊勢丹の驕りだった。

伊勢丹は北九州を福岡の郊外と捉え、1月に連結子会社化した岩田屋を都心店、小倉伊勢丹を郊外店と位置づけているふしがある。しかし北九州は福岡の郊外ではなく、人口構成も立川とは似ても似つかない。小倉伊勢丹に待望されたのは東京郊外の「雰囲気」ではなく、東京都心の「品揃え」だった。北九州の客は雰囲気を消費できるほどには成熟していない。北九州にないめずらしいモノがあり、それが自分を対象とした商品である場合にはじめて消費意欲を掻き立てられる。

雰囲気を売るのは難しい。小倉伊勢丹は20~30代の女性を戦略顧客層としたことから、北九州で足まめに百貨店へ通う中高年女性にとっては買えるモノがなかった。そこに、顧客不在の伊勢丹色を前面に押し出したものだから、中高年女性は疎外感をことさらに強め、必要以上に印象を悪くした。新しい提案は「雰囲気の押し売り」と受け止め、「田舎をふふんと鼻で笑って馬鹿にしている」(主婦)という感情的な反発を生じさせた。

井筒屋の資本が注入されたことからさまざま気兼ねはあろうが、自らの暖簾に対する過信が大きく躓かせた原因だと考える。北九州は難しい市場ではなく、子供のように無邪気で単純な市場なのだ。まずは北九州の顧客に寄り添い、北九州の感覚を身につけた上で、伊勢丹ならではの新しい生活提案で、少しずつ顧客を変えてほしい。

2年目の期待

小倉伊勢丹は昨年の開店初日に14万人が来店し、今年の初売りには12万5000人が来店した。この「お祭り時の潜在市場」は300万の後背地人口を有す。かれらはいまだ小倉伊勢丹への期待を捨てておらず、地元政財界が小倉南口の一等地を東京資本へ明け渡したのも、地元資本では惹きつけられないこの潜在市場を北九州へ惹きつけたかったからだ。

しかし東京はそのままでは通用しない。地元事情に精通した人間を企画に入れて、かれらの声にも少しは耳を傾ける必要があろう。デコシティもそうだったが、東京が単独で行う企画提案は、こちらの人間からみれば明らかにズレている。

北九州は他の大都市と比較すると少子高齢化が15年進んでいる。少子高齢化は人口構成だけではなく、消費のあり方や交通手段の変化などももたらしている。東京資本が北九州の市場で総崩れなのは、将来に対応できていないことの証だろう。北九州を制すことは将来の市場を制すことでもある。北九州でノウハウを学んで将来に備えてほしい。

2年目の小倉伊勢丹は中高年層向けの婦人服を中心に25ブランドを入れ替えるという。北九州の顧客を伊勢丹色に染めたいという野心は評価できる。そうであってこそセントシティ北九州を譲った価値もある。目的を果たすためにも、まずは小倉伊勢丹が変わることを期待したい。

広告

管理

関門通信は参加型のニュースサイトです。だれでも自由に記事を投稿できます。
Nucleus CMS v3.24 | ©2009 Kanmon Tûsin. Morrie & Co. All rights reserved.